目次
はじめに
バレエやコンテンポラリーダンスなどのアート系のダンス留学をする場合、アメリカに行くか、ヨーロッパに行くかで迷うこともあるかもしれません。
実はこの2つ、ダンサーが仕事を見つける場合に環境が全く異なるのです。
そのような背景を紹介していきたいと思います。
アメリカのダンスカンパニー
まずアメリカの方ですが、実は国からのアートに対するサポートというのは日本と同じでほとんどありません。
ダンスカンパニーのほとんどはNPOであり、働くダンサーも労働環境が保証されておらず、最低時給や保険のサポートなどもありません。
ニューヨークシティバレエなど州がバックについている団体ならばまだしも、それ以外の振付家が立ち上げた団体などが国から援助を得られるということは滅多にありません。
なのでトップレベルのダンスカンパニーに入団できても生活はなかなか厳しく、カンパニーのオフシーズンはダンス以外のバイトをしている人も少なくありません。
アメリカのダンスカンパニーの収入源
では国の支援なしでどうやって運営するのかというと、週5日・1日8時間リハーサルがあるなどのフルタイムの契約があるカンパニーの場合は富裕層などの大きなスポンサーがついている場合が多いです。
アメリカも日本もそうなのですが、芸術関係などに投資することは税金控除の対象になり、会社などを持って稼いでいる人たちからすると、国に税金を取られるよりも芸術団体に寄付し、成長を見守り公演なども優待席で観覧するなどの娯楽の楽しみもあるわけです。
近年では減少傾向にあるサポート
しかし、近年ではそのようなサポートをしてくれるスポンサーも少なくなり、今までついているスポンサーが離れて潰れるダンスカンパニーもでてきています。
数年前まではアメリカではダンスなどの舞台芸術を鑑賞する娯楽が富裕層の遊びとして一般的だったのですが、テクノロジーが発達した現代ではもっと面白い娯楽が登場し、今の世代にはダンスなどに投資する興味がなくなってきているようです。
そのため昨今のアメリカのダンスカンパニーは不景気な状態と言えます。
それでも強いアメリカブランド
アメリカのダンスカンパニー自体は不景気とはいえ、やはりニューヨークなどには伝統ある劇場やダンスが発展してきた歴史があり、そこでパフォーマンスすることは世界中の振付家が名を挙げるためのステータスになっています。
そのため世界中の有名ダンスカンパニーが公演に訪れます。
なので不景気となった今でもニューヨークなどでは世界のトップレベルの公演を一年中見る機会がありますし、良いダンサーも集まってきます。
アメリカで活動することのメリット
以上のようにアメリカではダンスカンパニーは国のサポートもなく、ダンスカンパニーに入っても食べていくのは難しいです。
しかしダンサーのレベルは非常に高く、世界中のダンスの情報が手に入るので自分のスキルアップには最適でしょう。
ヨーロッパのダンスカンパニー
これに対してヨーロッパですが、こちらはアーティストに対するリスペクトが高く、ダンサーも労働条件が保証されています。
最低賃金や保険、外国人にはビザなどもサポートされ、入団すればダンスだけで生活していくことができます。
デメリットも
こう聞くとヨーロッパの方が良いという感じもしますが、当然デメリットもあります。
それはダンスカンパニーを立ち上げるのが難しく全体的な数がアメリカに比べて圧倒的に少ないです。
ダンサーたちは少ない枠を取り合うことになるのでダンスカンパニーに入ることはアメリカより大変です。
アメリカであれば小さいダンスカンパニーもたくさんあるので、そういう所に入って経験を積んで大きなカンパニーのオーディションに挑戦していく、ということもできます。
また、小さいダンスカンパニーでもちゃんと活動していればビザはキープできます。
しかしヨーロッパにはダンス学校からいきなりフルタイム契約の仕事を探すことになります。
留学しても仕事が見つからないうちにビザが切れて帰国することになり、プロとして活動する経験が詰めなかったなんてこともありえます。
振付家になりたい場合
ところでダンサーでなく、自分でダンスカンパニーをやる振付家になりたい場合はどうでしょう。
これはアメリカの方が圧倒的にやりやすいです。
ヨーロッパの場合、ダンサーの労働条件を保証しなければなりません。
団体を立ち上げる前に相当な元手やスポンサーが必要になります。
しかしアメリカの場合、最悪自称ダンスカンパニーでも始められるのです。
NPOなどの登録もせずにオーディションを行い、人を集めて作品を作って公演をすればダンスカンパニーです。
そのためヨーロッパ人の振付家でアメリカにカンパニーをするために来る人も多くいます。
ダンサーへの給料も最悪払わなくてもできます。
経験の欲しい若いダンサーであれば給料なしでもやるという人はたくさんいます。
当然ノーギャラでは良いダンサーは集まらないわけですが。
とはいえ、こうやって小さい団体で初めて振付の経験を積み、振付が良ければ名前が広まり良いダンサーも踊ってくれるようになります。
やがて有名になっていけばカンパニーを大きくしていってスポンサーもつき、給料も払えるようになったという団体も非常に多いです。
まとめ
このようにアメリカとヨーロッパではダンサーの労働条件には大きな違いがあります。
国民のことを考えない勝手なアメリカ政府と国民を大事にするヨーロッパ政府の性格がよく表れていると言えます。
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